ウイ―ピング・ハープ妹尾氏を偲ぶ
2018-08-14


★ブルースハープといえば、妹尾隆一郎であった。

 ちょっと専門的なことに話は進む。関心のない方はご遠慮下さってかまわない。

 我、マス坊は、下手の横好きというべきか、昔からハーモニカという最小の楽器が好きで、今も様々な種類のそれを集めていることは先にも記したかと思う。
 今では、学校の音楽教育の場でも、ピアニカのような鍵盤タイプのハーモニカは使うことはあっても手で持って口で吹く、昔ながらのハーモニカは用いることはすくないと知って複雑な気持ちになったことも書いた。
 ただ、そうした昔ながらのとは違い、もっと小さな10穴のハーモニカは、ディランや拓郎、長渕、ゆず、ら、人気アーチストが今も頻繁に使っているので、ミュージシャン志望の若者たちには一定の需要はあるのだと聞いている。

 我もそうした10穴のそれ、テンホールズとか、ブルースハープと呼ばれるハーモニカは、メジャーもマイナーのも全て揃えて、このところはヤフオクで、複音ハーモニカにまで手を伸ばしたので今やそのコレクションはかなりのものとなった。
 しかしそもそもそうしたハーモニカなる楽器にきちんと向き合うきっかけとなったのは、一人の天才的ハーモニカ奏者を知ったことが大きい。
小学校で習うハーモニカとはまったく違う、ごく小さいブルースハープという世界の広さと深さを教えてくれたのは、「ウイ―ピング・ハープ・セノオ」氏であった。
 妹尾隆一郎と書いて、「せのお」と読む。彼こそが今も昔も日本のブルースハープの一人者で、彼のように泣かせるハーピストは我は他に知らない。

 今日、フォーク界のみならず日本のポピュラーソングシーンでは、ブルースハープ奏者というと、ありちゃんこと、松田幸一氏がまず筆頭格であろう。多くの教本も出しているだけでなくあちこちで講座も開かれて多くの教え子たちがいる。全く異論はないし素晴らしいテクニックである。
 私感だが、知る限り、日本のフォークシーン界隈でのハーモニカ名人と言えば、まずシバ、そしてヤスこと朝比奈逸人、松田幸一であろう。
 彼らはそれぞれがすぐれたシンガーであり、ソングライターであり、ハーモニカも達人であった。
 ※ちなみに、風太から昔聞いたはなしでは、確かありちゃんは、車で学校給食の牛乳配達するバイトしながら、運転中ずっとハーモニカを咥えて練習して上手くなったとのことだが、ほんまかいな、である。

 が、ちょっと彼らから離れて、真にブルースハーモニカだけの奏者として誰がいるかというと、日本のロック、ポップス界では、「ウイ―ピング・ハープ」妹尾隆一郎しかいなかった。むろん昔ながらのトレモロハーモニカやクロマチックハーモニカの世界ではそこにはそこの達人はいたと思う。我が知らないだけで。
 我は若いとき、彼のアルバムを偶然手に入れて、ほんとびっくらこいた。ちょうどその頃、本場のそれみたいな「本格派」ということがウエストロードブルースバンドが出て来て以来あちこちでとりざたされていたが、まさに彼のハーモニカは本格派であり、本物であった。日本人で、こんなふうにポール・パターフィールドみたいに吹ける人かいることに衝撃を受けた。
 
 以来、我の中では、ウイ―ピングハープ妹尾という名前は、ハーモニカの神様として、まさに別格として、永遠の憧れとなっている。そして、拙くとも我もまたハーモニカをステージで吹くときは、妹尾氏のことを常にどこか意識していたと思う。
 彼がすごいのはディランや拓郎のように、歌手が1人で演るとき、唄の合間にメロディを吹いて、うたのサポートに過ぎなかったハーモニカという小楽器を、きちんと独立した楽器として世に認めさせ確立したことであろう。ハーモニカとは、ただギター弾きながらホルダーに挟んでプカプカ吹くだけのものではない立派な独立した一つの楽器なのだと。

 正直に告白すると、あれこれ忙しさと雑事にかまけて近年ずっと妹尾氏のことは失念していた。

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[日々雑感]

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